相模原障がい者殺傷事件を共に考える集い開催

当日の配布資料
津久井やまゆり園事件からS.pdf
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 去る6月29日(木)石狩市総合保健福祉センターりんくる」視聴覚室において相模原障がい殺傷事を共に考える集いが開かれ50名程の参加で会場も満席なりました

 最初にオープニングでNHKの特設サイト「19のいのち-障がい者殺傷事件-」から『“19のいのち投げかけるもの26歳女性母親"一生懸命生きた“』その中で娘さんを亡くした母が寄せた手紙には「娘は一生懸命生きていました」母が被告に一番言いたいことはただただ「私の娘を返して」というとだけですと記されていました。続いてNNEWS

相模原殺傷事件 被害者家族のっか月」から、犯刃物で刺されたその一人である尾野一也さんと父母が実名を公表して、容疑者の「障がい者は必要ない」というその言葉は間違っているとして、事件を風化させないためにもカメラの前に出ることで容疑者の言葉と闘っていると語られていました。

 集いの開会あいさつがP&Aいしかりの佐々木世話人代表からあり、続いて「津久井やまゆり園事件から人権や命の重みを考える」と題して、松泉グループ総合施設長の光増昌久氏(障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会 代表)より、主に当事者の立場からのお話がありました。ナチス・ドイツでの優生学思想で多くの障がい者が安楽死政策でホローコーストのリハーサルでガス室に送り込まれた事実。日本での幼児虐待で望まぬ妊娠で親の虐待が多いこと。新出生前診断でダウン症をはじめとする染色体異常などで中絶が増えていること。しかし、ダウン症の障がいを持っていても素晴らしい活動をしている画家の岡本佳子さん、書家の金澤翔子さんの紹介がされました。また、国や神奈川県での事件検証審議の情報も紹介されました。横浜の「相模原事件を語る会」主宰の知的障がい当事者の奈良崎真由美さんがこの事件を知り、「私いま壊れそう」「事件への思いを障がい者本人の言葉で伝えたい」との思いや北海道当事者の会連絡会「風の会」のメッセージと札幌みんなの会の土本秋夫さんへのマスコミ取材の内容が紹介されました。土本さんにも重度の弟さんがおり、今回の事件で「そのことを思うととても辛い。最大の人権侵害だ。言いようがない。」そして、津久井やまゆり園で献花を行った際に「台勢の仲間たち19名がなくなった。これからも私たちは忘れない」と涙ながらに語って言葉は、深く心に残りました。参加された皆さんからのアンケートでは多くの声が寄せられました。PAI活動広報21号で紹介させていただきます。

「相模原障がい者殺傷事件をともに考える集い」に参加して

P&Aいしかり世話人 遠藤健治

 昨年7月26日深夜、知的障がい者支援施設「津久井やまゆり園」で入所者、職員46人が次々に刃物で刺され19人の方がその尊い命を失うという、痛ましい事件が起きました。

このような事件を起こさせないために、障がいのある人の不安・憤りの声を聞き、安心して地域で暮らすことや障がいのある人への理不尽な差別・排除をなくしていくために、一市民として何ができるのかを考えてきました。

6月29日()10:00より光増昌久さんの講演会が行われました。忌まわしい殺害事件からもうすぐ1年になります。その日を前に、光増さんの講演内容は、容疑者の起こした事件の背景の優勢思想を断罪し、障害のある人の人権や命の重みを考え、当事者に寄り添うものとなりました。

事件の背景に優勢思想が存在

光増さんは、容疑者の行動には「優勢思想を持って実行していった。」ものとして許すことのできないことと話していました。ナチス・ドイツのT4作戦の優生学思想に基づいて行われた安楽死政策や日本軍が731部隊で行った人体実験と同じもので、ナチス・ドイツのみが行ったのではなく日本軍も同じことをしており、「人ごとではない」とお話していました。日本国内にも優勢思想が存在していたし、今も存在していることを忘れるわけにいきません。

ロバートマーティンの追悼集会のメッセージ

事件が起きてまもなく8月6日に亡くなった方たちを追悼する集会にロバートマーティン(国連障害者権利委員)さんがメッセージを寄せられました。その中で「このような悲劇を再び起こさないために、障害者が確実にかけがえのない市民として見られるよう私は懸命に努力します。世界の人々に障害者を仲間の人間として、本当の人間としてみてもらうことが必要です。」と述べています。

障がいのある人の活動紹介

画家、書道家として活躍している方の活動もお話されました。画家の岡本佳子さんの絵本作りなどの世界を紹介されていました。また、金沢翔子さんが書道家として活動し、「平和に祈り」「ともに生きる」を揮毫している姿を紹介されていました。光増さんは、「優しい言葉、きれいな言葉で文通している」と、お話されていました。

神奈川県の検討チームの取り組み

神奈川県としての取り組みについては、「相模原市の障害者支援施設における事件の検証および再発防止策検討チーム」が、再発防止策の方向性の中で「学校教育をはじめとするあらゆる場での『心のバリアフリー』の取り組みの充実」と報告しています。しかし、差別解消法のマニュアルを教育現場は知っておらず、関係者、市民にも浸透していない状況で、そこから運動していくことが大切であるとお話していました。どのように架け橋を作り、つながりを結んでいくのかということがとても重要なことと思います。

私たちは忘れない

当事者の活動として横浜の楢崎さんは、国際育成会連盟の総会でメッセージと黙祷を呼びかけました。北海道では、昨年11月23日北風の会が集会を開き、「津久井やまゆり園殺人事件 命を奪うことは許さない!私たちは北で生きている」と宣言を出しました。そこでは、「やまゆり園の仲間たちは恐くて悲しかったと思います。そんな気持ちを思うとたまらないです。」と思いを寄せ、犯人への怒り、そして「私たちはいろいろな支援を受けながら色々なことができるのです。」と述べながら、「私たちに関係する事件なのに、私たちの声は社会に届きません。」と訴え、最後に「私たちにできることはいっぽいっぽ進むこと。」「私たちは障害者である前にひとりの人間です。」と結んでいました。

当事者の方たちが、「社会に届きません」という絶望的な状況に置かれ暮らしている社会になっていることを理解し、当事者をこれ以上孤立させない運動が必要です。

また、当事者の土本さんが津久井やまゆり園前の取材で『私たちは忘れない。』という発言がありましたが、しっかりと胸に刻んで行きたいと思いました。

当事者の思いを生かす地域

光増さんは講演の終わりに、「当事者の思いを伝えたいと思ってきました。」とお話していました。

思想6月号で稲原美苗さんという研究者が、障害者基本法の「障害者に対する差別を禁止するための情報を提供しなければならないこと」を紹介しています。当事者が、置かれているつらさや憤りなどを大切に、法律などを参考にしながら、差別解消の取り組みが求められていると思います。

この集いでは、光増さんの講演で当事者の目線に立ち、追悼集会や当事者の集会で出された意見、障害のある人の活躍している姿を通して人権や命の重みを支える地域社会を目指していくいろいろな取り組みや課題が出され、貴重な集いになりました。

石狩らしいネットワーク活動を

石狩市手をつなぐ育成会では、2004年の函館大会で佐々木さんが中心になり「石狩にも障がいのある人のためのセーフティネットを」と提言し活動を積み重ねてきました。2001年からPA北海道の石狩地区連絡員として活動した経験を生かし、石狩市に石狩らしい歩みのセーフティネットを創ろうとする活動の始まりでした。そのような保護者たちの願いや努力が、石狩市障がい者支援センター保護者会、石狩市障がい者支援センターと協力し、現在につながっています。保護者たちの力が地域にネットワークを創っていく力になります。今回の集いには、57名の参加者があったということですが、保護者の皆さんが元気に活動されることが大切になっています。